相続における生命保険の活用
目次
――不動産があるご家庭ほど、静かに効いてくる選択肢
はじめに:生命保険は相続とどう関係するのか
相続の相談をしていると、
「生命保険って、相続と関係あるんですか?」
と聞かれることがあります。
多くの方にとって、生命保険は
「万が一のときのためのもの」
「税金対策の話で出てくるもの」
というイメージが強いのかもしれません。
確かに、相続の場面では
「非課税枠がある」
「相続税対策になる」
といった説明がされることもあります。
ただ、実際の相続の現場を見ていると、
生命保険が役に立つ場面は、
もっと実務的で、もっと現実的なところにあります。
特に、不動産を持っているご家庭では、
生命保険があるかどうかで
相続の進み方が大きく変わることがあります。
1. 不動産がある相続は、現金不足になりやすい
相続財産に不動産が含まれている場合、
次のような状況は決して珍しくありません。
- 財産の大半が土地や建物
- 預貯金は思ったほど残っていない
- 相続人が複数いる
不動産は大切な資産ですが、
すぐに分けることができない
必要なときに現金化しづらい
という特徴があります。
そのため、
- 遺産分割の話し合いが進まない
- 不公平感が出やすい
- 「売る・売らない」で意見が割れる
といった問題が起こりやすくなります。
相続が揉める原因は感情だと言われますが、
その感情が動き出すきっかけは、
多くの場合「現金が足りないこと」にあります。
2. 生命保険が役立つのは「調整が必要なとき」
ここで生命保険の特徴を整理してみます。
生命保険には、
- 受取人を指定できる
- 比較的早く現金で受け取れる
- 使い道を限定しなくていい
という性質があります。
この「確実に現金が届く」という点が、
不動産相続と非常に相性が良いのです。
たとえば、
- 不動産は一人が引き継ぐ
- 他の家族には現金で配慮する
こうした形を考えるとき、
生命保険は現実的な選択肢になります。
不動産を無理に売らずに済む
共有名義を避けられる
将来の管理や処分で揉めにくくなる
こうした効果が期待できるケースもあります。
3. 「とりあえず保険」はおすすめできない理由
一方で、生命保険について
注意しておきたい点もあります。
実務でよく見るのが、
- 税金の話だけを聞いて保険に入る
- 不動産をどうするか決めないまま契約する
- 「何となく不安だから」金額を決める
といったケースです。
生命保険は便利ですが、
全体の方向性が決まっていないと、かえって調整が難しくなる
こともあります。
たとえば、
- 不動産を誰が引き継ぐのか決まっていない
- 将来売るのか、持ち続けるのか決まっていない
この状態で保険金額だけを決めても、
相続の場面では「足りない」「多すぎる」と
別の不満が出てくることがあります。
まず考えるべきなのは、
- この不動産をどうしたいのか
- 誰が引き継ぐのが現実的なのか
そのうえで、
「足りない部分をどう補うか」を考える。
これが自然な流れです。
4. 不動産が絡む相続で考えておきたい視点
生命保険を検討する前に、
次のような視点を一度整理しておくと、
話が進めやすくなります。
・この不動産は誰が使う前提か
住むのか、貸すのか、売るのか。
使い道によって、必要な現金の額は変わります。
・将来の管理は誰が担うのか
固定資産税、修繕、管理の手間。
これらを誰が引き受けるのかは重要です。
・分けたいのか、引き継ぎたいのか
不動産は「平等に分ける」より、
「役割を決めて引き継ぐ」方が
うまくいくケースが多い資産です。
これらを整理した結果、
「調整用の現金が必要だ」となったときに、
生命保険が検討対象になります。
5. 生命保険は「気持ち」を伝える手段にもなる
生命保険には、
数字では測れない役割もあります。
それは、
親の考えや配慮を、形として伝えやすい
という点です。
「この人には不動産を」
「この人には現金で」
こうした意思がはっきりしていると、
相続後の話し合いが落ち着きやすくなります。
金額の多い・少ないよりも、
「考えてくれていた」
「役割を意識してくれていた」
という点が、家族の納得感につながることも少なくありません。
6. 不動産と生命保険は、セットで考える
相続における生命保険は、
単体で考えるものではありません。
- 不動産の価値
- 将来の使い道
- 家族構成
- 現金の余力
こうした全体像を見たうえで、
必要であれば取り入れる
という位置づけが、ちょうどいいと感じています。
生命保険は万能ではありませんが、
使いどころが合えば、
相続を静かに支えてくれる存在になります。
おわりに:今できる小さな一歩
生命保険を使うかどうかに、
明確な正解はありません。
ただ、不動産がある場合には、
- 現金がどれくらい必要になりそうか
- 誰にどんな形で引き継ぐのか
一度立ち止まって考えてみる価値はあります。
相続は、準備の段階でほぼ決まります。
焦らず、少しずつ整理していくことが、
結果的に家族を守ることにつながります。
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